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「青くて痛くて脆い」最近印象的だった作品

桜の木の前で笑っている女性

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感想

オープニングでは広々とした教室でのマニュアル通りのマエストロFX講義が延々と映し出されていくために、思わず眠気を誘われてしまうでしょう。

新入生たちが大学教授の話にもろくに耳を貸さずに、手元のスマートフォンをいじくり回すのに夢中なのも無理はありません。

突如としてひとりの女子学生が手を挙げて立ち上がることによって、そんなダラダラとしたムードが一発で吹き飛んでしまうかのようでした。

「質問は後で」というウンザリとした様子の教授にもお構い無しに、矢継ぎ早に言葉を浴びせる秋好寿乃が勇ましいです。

入学以来波風立たないようにしてきた田端楓も、たまたま同じ場所にいたことから否応なしに巻き込まれていきます。

学食では隅っこの席に座ってふたりで一緒にランチ、講義が終わった後には緑豊かな大学周辺をのんびりと散歩。

一見すると若いカップルのデートにも見えますが、あくまでもお互いのことは「同士」だと言い切るふたりが微笑ましいです。

友だちと遊びに行くための待ち合わせ場所のようなスペースを提供、誰もが成りたい自分になるための後押し。

ふたりの創設者によってふたつのシンプルな目標を掲げて結成されたはずのモアイですが、徐々に組織自体が意志を持って肥大化していくようで危ういです。

学生サークルの本分に止まることなく、我が物顔で周辺の施設までを占拠しているモアイの面々には嫌悪感を抱いてしまうのではないでしょうか。

悪質な勧誘や迷惑メール、さらには大企業との個人情報の売買などタイムリーな社会問題まで盛り込まれていて考えさせられました。

自分が生み出したはずのモアイをコントロールできなくなった秋好が、ついには一線を越えてしまうシーンには手に汗握ります。

かつては同じ理想に燃えていたはずの田端と秋好が、袂を分かつ後半の展開には胸が痛みました。

SNSによる炎上騒ぎやインターネット上での誹謗中傷など、お互いが直接的に会うことなく攻撃し合うのがいかにも現代の若者らしいですね。

そんなふたりが初めて顔と顔を突き合わせて、それぞれの本音をさらけ出す場面には心を揺さぶれます。

相手に自分の気持ちを伝えて分かり合うための手段は、スマートフォンやパソコンが全てではありません。

他人と関わることを避けて生きてきた田端が、初めて傷つくことを恐れることなく大切な人と向き合う決定的な瞬間です。

まとめ

青春時代のきらめきや無限の可能性だけではなく、理想と現実とのギャップに打ちのめされてしまう挫折感もリアルに描かれていました。

二度と戻ることのない時間の流れの残酷さと、大人になっていくことの息苦しさも伝わってきます。

ある者はリクルートスーツを身に纏って早々と内定を手に入れて、ある者は日本を飛び出して海外へと向かい、ある者は諦めきれずに夢を追い続けて。

個性豊かな登場人物たちが選んだ道のりと、それぞれの決意を応援したくなるような清々しいクライマックスです。

社会に出るまでの空白の時間や卒業後の進路に漠然とした不安を抱いている、就活生の皆さんは是非ともご覧になってください。

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